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テロリストのパラソル (角川文庫)

テロリストのパラソル (角川文庫)

藤原 伊織

累計読者数6
平均ハイライト数 24.2件/人
推定読了時間 約7時間41分
star総合評価 47/100
start序盤集中型
check_circle推定完走率 10%

この本について

仕事でも生活でも、「自分の過去をどう扱えばいいのか」でつまずく瞬間ってありますよね。忘れたつもりのことほど、ふとした拍子にじわっと戻ってきて、今の判断を曇らせる。逃げても追ってくる。かといって、真正面から向きあうほどの覚悟もない。そんな宙ぶらりんの状態に、ずっと落ち着かないまま過ごしてしまうことがあると思います。 『テロリストのパラソル』の抜粋を眺めていると、読者が刺さっているのは“過去の匂い”みたいなものだと感じました。新宿の爆発事件という大きな出来事の裏に、主人公の私生活の湿った空気や、かつての仲間との関係、消えていった時代の影がゆっくり重なってくる。事件の謎よりも、人が長く抱え続けてきた疲れや後悔の方が胸に残るんですよね。突然の爆音やサイレンのなかで、主人公がとっさにウイスキーの瓶や指紋のことを思い出す場面も、妙にリアルで、妙に生活感がある。大ごとの渦中でも、結局人は自分のちいさな現実から逃げられないんだと感じます。 この作品が効くのは、過去と現在がつながってしまう瞬間にうろたえる自分を、少し俯瞰して見られるところだと思います。主人公と若い女性の会話のように、話すつもりのなかった記憶がひょいと口をつく感覚。あるいは、何年ぶりかで吸う煙草が肺の奥でふくらむ重さ。その細部を追っていくうちに、過去は消えないけれど、扱い方は変えられるのかもしれないと素直に思える。 こんな人に刺さると思います。自分の“昔の話”がたまに重くのしかかってくる人。今を変えるというより、まずその重さを言語化したい人に。作品としての面白さももちろんありますが、それ以上に、くたびれた大人がそれでも今日を続けている理由を、静かに照らしてくれる一冊でした。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

アル中のバーテン・島村は、ある朝いつものように新宿の公園でウイスキーを呷った。ほどなく、爆弾テロ事件が発生。全共闘運動に身を投じ指名手配された過去を持つ島村は、犠牲者の中にかつての仲間の名を見つけ、事件の真相を追う―。乱歩賞&直木賞を史上初めてダブル受賞した傑作。
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