
塗仏の宴 宴の支度(1)【電子百鬼夜行】 (講談社文庫)
京極夏彦
講談社 / 2003-09-15
この本について
仕事でも日常でも、自分の“記憶”や“思い込み”にずっと振り回されている感覚ってありませんか。確かにあったはずの出来事が曖昧で、確認しようにも記録がなくて、でも心のどこかには強烈に残っている。あんな感覚が続くと、自分の足場がふわつくんですよね。今回の『塗仏の宴 宴の支度』の抜粋を見ていると、その不安にそっと触れてくるような場面が多くて、読者の方もそこに反応したのだろうと思いました。 この巻は、村が丸ごと消えていたり、あるはずの記録が見つからなかったり、覚えているのに“存在しない”場所が何度も出てきます。読んでいると、不思議な現象というより「自分の記憶の揺らぎ」と地続きに感じられて、現実の迷いにもすっと重なってくるんです。例えば、村上の抱える家族への複雑な感情や、帰る場所があったはずなのに空っぽになっている場面は、自分が何を拠り所にして生きているのかを問い直させますし、光保の“怖がり”という告白も、人が抱える説明しづらい不安そのものに触れています。 もう一つ、この物語の良さは「自分の視界の外で何が動いているのか分からない」という感覚を、そのまま物語にしてくれていることです。軍部の影や、村人の失踪、誰も知らない村の存在。全てを説明しきらない不確かさが、かえって自分の中の“見えない不安”を掬い上げてくれます。無理に言語化しないまま寄り添ってくれる小説って、ありそうでなかなかないんですよね。 曖昧さや不気味さに耐えながら、それでも現実を掴み直したい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの13%が集中しています。
読書の順序
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