
この本について
仕事でも人間関係でも、誰かの気持ちを知らないうちに傷つけていたんじゃないか、と後からひっそり落ち込むことがあります。家族のことも、自分のことも、振り返れば「もっとできたんじゃないか」という思いがつきまとって、答えのないまま日々が過ぎていく。そんな時に三浦綾子の『母』を読むと、少しだけ呼吸がしやすくなる感覚がありました。 この本は、立派な言葉より、日々の小さな行動や気持ちの揺れをそのまま受け止めてくれます。たとえば、誰かを思ってしたはずの行動が相手を淋しくさせてしまう場面が何度も出てくる。でも同時に、番茶を淹れて世間話を聞くだけで、相手の背中をそっと支えられることも描かれている。自分の善意や不器用さを「それでいいんだよ」と言われているようで、肩の力がゆるみます。また、家族が互いの弱さを責めないで支え合う姿が続くので、「完璧じゃなくても誰かを大事にできる」という視点を思い出させてくれます。 そして何より、多喜二が「自由でなければならない」と言いながらも、不器用なくらい相手を思う場面に触れると、人を大切にするってこういうことかもしれない、と静かに考えさせられます。派手な感動ではなく、じわっと心にしみる本です。 家族や人との距離の取り方に迷っている人に、特に刺さると思います。
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