
少女を埋める (文春e-book)
桜庭 一樹
文藝春秋 / 2022-01-25
この本について
家に帰るたび、昔の距離感に巻き込まれてしまう感じってありませんか。大人になったはずなのに、いまだに「子どもとしての自分」が勝手に出てきて、正論でなんとか踏ん張るしかないときがある。頭では整理できても、心がそのスピードについてこなくて、しんどいまま残るあの感じです。 『少女を埋める』を読んでいて刺さったのは、著者がその「心が置いてけぼりになる瞬間」を丁寧にそのまま置いているところでした。無理に前向きな意味づけに走らず、わからないものをわからないまま棚に置いておく姿勢に、救われる人は多いと思います。実家の濃い人間関係に巻き込まれつつも、東京の友人たちの感覚に支えられながら少しずつ自分の足場を整えていく過程が、現実のゆっくりした変化に近いんですよね。 もうひとつ、この本の効き方として大きいのは、「正しさにしがみつく理由」まで描かれているところです。理屈が命綱になる瞬間と、その一方で共同体に溶ける“楽さ”に自分が惹かれてしまう瞬間。その両方が正直に描かれるからこそ、自分の混ざった感情をそのまま持っていていいと思える。親との距離、家族行事の役割、故郷と都市のコミュニティ…どれも単純じゃないからこそ、読み手の呼吸を奪わない温度で寄り添ってくれます。 家族との距離の取り方に悩む人、あるいは「正しさと感情のズレ」に疲れている人には、静かに効いてくる一冊だと思います。自分のペースで読んで大丈夫な本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの36%が集中しています。
読書の順序
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