
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
桜庭 一樹
この本について
最近、身のまわりのことをこなすだけで精一杯なのに、ふとした瞬間に「安心ってどこにあるんだろ」とか「好きって結局しんどいだけじゃないか」とか、妙に根の深い問いが湧いてきてしまうことがありませんか。考えたところで答えなんて出ないし、でも放っておくとじわじわ疲れてくる。そんな時期にこの本を読むと、物語というより“他人の痛みの温度”に触れる感覚に近いと思います。 この作品が効いてくるのは、まず登場人物たちの言葉が、きれいごとじゃなく実生活の中でこすれてきた感情そのままだからです。「好きって絶望だよね」とか「安心できたら幸せなのかも、わかん」といった独白は、答えの提示ではなく、“自分もこんなこと考えたことあったな”という気づきを静かに返してくれます。また、家族や環境に振り回されながら「生活の実弾」をどう撃つかあがく描写が強くて、読んでいると、自分が抱えてきた生きづらさの輪郭が少しだけはっきりするんですよね。 そしてもうひとつ、この物語は“救いの形”を押しつけてこない点がありがたいです。誰かが劇的に変わるとか、状況が一気に良くなるわけじゃない。ただ、いつか別の場所に行けるかもしれない、そのために自分は何を選び取るのか——その視点だけは確かに残してくれる。現実をそのまま見つめる勇気というより、現実と距離を取るための呼吸の仕方をそっと教えてくれる感じに近いです。 「今の自分のままで大人になるのが不安」と感じている人にとって、刺さるところがきっと多い一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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