
空海「三教指帰」 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)
空海, 加藤 純隆, and 加藤 精一
KADOKAWA / 2007-09-22
この本について
最近、自分の軸がどこにあるのか分からなくなることが増えました。周りの価値観に引っぱられたり、環境の影響を受けすぎたりして、「本当にこれでいいんだっけ」と立ち止まるあの感じです。そんなときに空海の『三教指帰』を読み返すと、千年以上前の言葉なのに、自分の迷いをそのまま射抜かれたように思える瞬間があります。 たとえば、人は環境に染まるという話。虎の皮をまとって立派に見えても、中身は錦袋に糞便が詰まっているのと同じこともある、と容赦なく突きつけてきます。目をそらしたくなるような比喩なのに、だからこそ「自分はどんな環境を選んでいるのか」を現実的に考えざるを得なくなる。また「目前の小事にこだわる必要はない」と言い切る一節は、日々の細かな不安に振り回されている自分を少しだけ遠くから見られるようにしてくれました。善い場所に身を置き、心のよりどころをどう整えるかという視点が、この本では徹底して語られています。 決して説教ではなく、「人の心は自然と悪に流れやすい」という前提があるので、理想論では終わらないのも救いでした。自分も迷うし、空海も迷った。そのうえでどう生きるかを探していく姿勢が、今の生活にも静かに重なってきます。 環境に振り回されやすい人、心の足場を整えたい人にはとくに刺さると思います。自分の暮らしを一度立ち止まって見直したいときに、そっと横で灯りをつけてくれるような一冊でした。
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