
善悪の彼岸 (光文社古典新訳文庫)
ニーチェ and 中山 元
この本について
考えをまとめようとすると、どうしても自分の癖とか、育ってきた価値観に引っ張られてしまうことがありますよね。自分では客観的に考えているつもりでも、「なんでこう決めつけてしまうんだろう」というモヤモヤが残る。善悪とか意志とか真理といった大きな言葉ほど、その違和感が強くなる気がします。 『善悪の彼岸』は、そのモヤモヤを勢いよくひっくり返すというより、「そもそもあなたが“そう考えてしまう理由”はどこにあるのか」を静かに突きつけてきます。哲学の体系が実は私的な感情や生理的なクセに左右されてしまうこと、意志という行為も実は複数の感情の寄せ集めにすぎないこと、そして自明に思える文法や言語の仕組みでさえ、思考の枠を決めてしまっていること。読んでいると、考え方そのものが揺さぶられるというより、「自分の思考の土台って案外こんなに条件付きなんだな」と淡々と理解させられる感覚に近いです。 全体として、ニーチェは「ものの見方の前提を、そのまま信じ切らなくていい」と言っているように思えます。真理より仮象が役に立つ場面もあるし、多くの人が正しいと言う意見に乗る理由も、自分の中の弱さや不安から来ているかもしれない。そうした“前提のほころび”を丁寧に拾ってくれるので、思考を作り直したい人には心地よい読書になるはずです。 こんな人に刺さると思います。自分の考えがどこから来ているのか、いったん深呼吸して確かめたくなる瞬間がある人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの37%が集中しています。
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