
白洲次郎 占領を背負った男(上) (講談社文庫)
北康利
講談社 / 2005-07
この本について
仕事でも人生でも、自分の立ち位置がよく分からなくなるときがあります。恵まれているのか、足りていないのか、そもそも何を基準に考えればいいのか…。そんな混乱が続くと、他人の生き方をうらやんだり、逆に劣等感を抱いたりして、気持ちが落ち着かなくなるんですよね。 白洲次郎の若い頃を追うこの本は、そういうモヤモヤを少しだけ整えてくれます。というのも、圧倒的な家柄や財力に恵まれていながら、その裏で本人も家族も迷いまくっている姿が、そのまま描かれているからです。ブガッティを工場まで行って習いに行くような豪快さがある一方で、兄・尚蔵が理想と現実のギャップに耐えられず心を病んでしまうくだりや、縁故に囲まれた環境が幸運でもあり重荷でもあったという描写は、「特別な家に生まれたからといって悩まないわけじゃない」という当たり前を思い出させてくれます。 読んでいるうちに、境遇をどう扱うかは本人の態度次第だという視点が自然と育ってきます。次郎の周りには名家や要人ばかりが登場しますが、彼自身はその環境に呑まれるでもなく、必要なときは突き放し、困っている友人には二年間住まわせて食事まで出すような不思議なバランス感覚で動いていく。生まれの大小に関係なく、「自分はどうありたいか」に立ち戻る大事さを静かに突きつけてくるんです。 家柄にコンプレックスがある人、逆に環境に甘えてしまう自分に嫌気がさしている人、どちらにも刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの40%が集中しています。
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