
海外企業買収 失敗の本質―戦略的アプローチ
松本 茂
東洋経済新報社 / 2014-11-27
この本について
海外M&Aに関わっていると、「結局どこに力を入れれば失敗しないのか」が曖昧なまま走らされているような感覚がつきまといます。条件交渉のテクニックを磨けばいいのか、シナジーの算定を精緻にすればいいのか、それとも現地任せにすればいいのか。正解がつかめないまま時間だけが過ぎていく、あの落ち着かなさを僕もよく感じます。 この本は、そうしたモヤモヤに対して「どこで経営の勝負が決まるのか」を静かに教えてくれます。特に刺さったのは、買収時点ではなく“買収後の経営”に話の重心が置かれているところです。規模の優位性をどう確保するか、現地でローカルチャンピオンとして育てる覚悟を持てるか、そして10年単位で事業を紡いでいく腹づもりがあるか。机上の売上順位の変化ではなく、その後の利益を地道に積み上げるための視点が、具体的な失敗例とともに淡々と示されています。 読んでいると、M&Aを「時間を買う手段」と捉えつつも、そこから先の苦労まではショートカットできない現実が腹に落ちます。そして、撤退や減損に追い込まれた事例が丁寧に並ぶことで、「なぜ自分たちが焦ってはいけないのか」が具体的に見えてきます。 海外事業の“その後”に不安を感じている人、あるいは買収を一度経験してその難しさを痛感した人にとって、過度に煽らない現実的な視点が刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの35%が集中しています。
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