
寺山修司全歌集 (講談社学術文庫)
寺山修司
この本について
日々やることに追われながら、ふと「自分という軸がどこにあるのか」わからなくなる瞬間ってありませんか。家族との距離感や、生まれ育った場所への複雑な気持ち、仕事に押しつぶされそうなときの空虚さ。割り切れるほど単純じゃないのに、整理しようとすると余計わからなくなるあの感じです。 寺山修司の短歌に刺さる人は、たぶんその“整理できなさ”を抱えたまま生きている人なんだと思います。母の記憶に揺れる歌、故郷との距離がにがく滲む歌、個人と国家の関係を静かに突きつけてくる歌。どれも説明ではなく、感情の輪郭だけを差し出してくるので、読んでいる自分のほうが勝手に過去や葛藤を呼び起こされるんですよね。自分でも触れたくなかった部分を、そっと撫でるように開いてくれるというか。 この全歌集の効き方はかなり独特で、前向きな答えをくれるタイプではありません。ただ、自分の中にある複数の声を無理にまとめなくていいんだと感じられる瞬間があります。たとえば「ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし」のように、言葉にならない違和感の存在そのものを肯定してくれる。あるいは「もしも友情か国家か…私は国家を裏切るだろう」のように、外側の大きな物語に巻き取られない“私”を思い出させてくれる。 一言でいえば、自分の“揺らぎ”をそのまま抱えていたい人に向いている本です。強くも弱くもなりたくない。ただ、いまの自分の輪郭を確かめたい。そんな夜に置いておくと、勝手に沁みてくるものがあります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
読書の順序
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