
翻訳百景 (角川新書)
越前 敏弥
KADOKAWA / 2016-02-10
この本について
翻訳の話って専門的に聞こえるのに、実際に読んでみると「これ、ふだんの文章の悩みそのままだ…」と思うことが多いです。原文の一文をどう割るかとか、語順をどこまで守るかとか、言葉の響きが締まるかどうかとか。仕事のメールでも企画書でも、似たような迷いを抱えている人は多いんじゃないでしょうか。 『翻訳百景』が面白いのは、「正しい答えがある世界」ではなく、「迷いながらも、より良い一歩を探す世界」がそのまま描かれているところです。辞書だけでは足りないこと、調べてもなお判断に迷う場面があること、そして最後の数割は訳者自身の読解と想像力で補うしかないこと。そういう“揺れ”を誤魔化さずに書いてくれていて、読んでいるこちらも変に背筋が伸びるというより、「あ、迷っていいんだな」と思えます。周囲に意見を聞くと必ず新しい発見がある、というくだりも、自分の仕事にそのまま重なる人は多いはずです。 個人的には、「すぐれた翻訳には、すぐれた原文とそれに拮抗する日本語が必要」という姿勢がいちばん刺さりました。普段触れる言葉の質が、自分のアウトプットの限界になるという感覚は、職種を問わず響くと思います。丁寧に調べ、簡単に妥協せず、でも必要なところでは大胆に切る。そのバランス感覚が、翻訳という枠を越えて仕事全般に応用できるんですよね。 文章に迷う人、判断に時間がかかりすぎてしまう人、あるいは「言葉に触れる仕事」を続けたい人には、とくに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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