
がんと闘った科学者の記録 (文春文庫)
戸塚洋二、立花隆・編
文藝春秋 / 2011-06-10
この本について
仕事でも生活でも、自分の判断が「これでいいのか」と揺れるときがあります。正しい答えがないテーマに向き合うときほど、根拠を求めて数字に寄りかかりたくなる一方で、数字だけでは割り切れない不安も残る。そんなモヤモヤを抱えている人に、この本はじわっと効いてきます。 戸塚洋二さんが、がん治療と最先端の物理研究というまったく違う現場で語ることは、とてもシンプルで、人間的です。ニュートリノのように「ほとんど検出できないもの」を相手にしてきた彼は、曖昧さをごまかさず、まず数値化して比較するしかないと語る。同時に、数字が示すのはあくまで一部で、生きている個体としての「私」はそこに収まりきらない、と自分の病状の記録を通して伝えてくれます。データと現実、そのあいだでどう立つのかを考えさせられました。 もう一つ印象に残るのは、「悟りとは平気で死ぬことではなく、平気で生きていること」という子規の言葉を、死を前にした科学者が静かに受け止めている姿です。科学の限界を知りつつ、それでも探究を続ける態度には、敗北主義への拒否と、希望にすがらない現実感が同居しています。生き方の話も、研究の話も、極端な精神論に流れないのが読みやすいところです。 理屈だけでも感情だけでも動けない時期にいる人、あるいは「不確かさの中でどう前に進むか」を考えている人には、特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの56%が集中しています。
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