
セラピスト(新潮文庫)
最相葉月
オレンジページ / 2024-03-15
この本について
仕事でも私生活でも、人と向き合う場面で「この感情、どこから来てるんだろう」と立ち止まる瞬間ってありますよね。相手の一言に必要以上に反応してしまったり、自分の中で二人の自分が言い争っているように感じたり。言葉にしたいのに、そもそも何を感じているのかがつかめないまま時間だけが過ぎていく。そんな状態に心当たりがある人には、この本がかなり静かに効いてきます。 『セラピスト』は、心理療法の歴史や技法の説明が中心ではなく、人が悩みを言葉にするまでの長い距離を丁寧に描いています。自動思考に呑まれそうになったとき、「それは本当にそうなのか」と立ち止まる練習の話。沈黙を許容できる医師とできない医師の違い。言葉を無理に引き出すのではなく、その前の段階が満たされてはじめて言葉があふれるという考え方。どれも大げさではなく、日常の自分の振る舞いをふと見直すきっかけになりました。 読んでいていちばん沁みたのは、人が苦しみから抜け出す過程には、治療者側の「熱意ですら負荷になることがある」という視点です。相手のために何かしたくて前のめりになるほど、逆に相手を追い詰めてしまうことがある。この距離感の難しさは、対人支援に限らず、誰かの相談に乗るときの私たちにもそのまま響きます。 「感情の正体がつかめず、結論を急いでしまいがち」と感じている人には特に刺さる本だと思います。焦って変わろうとしなくていいし、言葉が出てこない時期にもちゃんと意味がある。そんな視点を、淡々と、でも確実に手渡してくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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