
この本について
日々忙しくしていると、「このまま時間だけが流れていく感じ」がふっと不安になることがあります。どこかへ出かけたいわけでもないのに、落ち着きたいのか逃げたいのか、自分でもよくわからないあの感じです。そんなときに奈良のお寺の話なんて関係あるのかと思うかもしれませんが、この本を読んでみると、意外と心の奥とつながっている部分がありました。 たとえば、室生寺の五重塔が実際より大きく見えるという描写。写真だけでは掴めない「大きさの錯覚」に、自分の中の物差しが揺さぶられる瞬間があります。また、インドの四つの人生段階の話は、年齢ではなく“気持ちの段階”で人生を見直してみる視点をくれます。今の自分はどの時期にいるのか、そしてそこに無理はないのか、少し落ち着いて考えられるようになるんです。さらに、薬師寺の塔を「時をスイングする」と表現したり、秋篠寺の苔庭を「競輪場の近くにある宝石」と言い切ったりと、現実の中にふと深呼吸が生まれるような視点がたくさん出てきます。 大げさに心が整うとかではなく、ただ「自分のリズムを取り戻すきっかけ」が静かに置かれている本でした。旅に出る余裕はないけれど、景色の手触りだけでも感じたい人に、きっとしっくり来ると思います。
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