
平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集
古川日出男
この本について
日々、自分の判断に自信が持てなくなることってありませんか。何が正しいのか、どこまでが自分の思い込みなのか、歴史や伝統みたいな大きい枠に向き合うと余計に迷う。僕もそうで、「道理って何だろう」と立ち止まるたびに、人間の浅はかさや権力の移ろい方をどう見ればいいのか途方に暮れる瞬間があります。 『平家物語』(古川日出男訳)を読むと、その迷いがいったんほどけます。正しさなんて時代によって簡単にひっくり返るし、権力者の慢心も、家臣の諫めも、天皇の権威さえも、人間がどう振る舞ったかで姿を変えていく。保存されていた「盛者必衰」や「是非は定めがたい」というところに惹かれた方は、おそらく“判断に絶対はない世界”に触れる感覚に共鳴しているんじゃないかと思います。歴史的事件の羅列ではなく、関白の失墜や院政のねじれ、神話の語り直しが、現実の組織や対人関係にも通じる形で迫ってきます。 この訳のすごいところは、教訓めいたことを押しつけずに、「こういう人間の動き方が積み重なると、世界はこんなふうに揺れる」という手触りで読ませてくれるところ。自分の立場や正しさに固執してしまうとき、物の見え方がどれだけ狭くなっているかにも気づかされます。信仰や祭祀の描写が丁寧なのもあって、個人のちっぽけさを嘆くより、長い時間の流れのなかで自分を位置づけ直す余裕が生まれる感じがあります。 歴史の大きな物語を読みながら、自分の判断やこだわりを見直したい人に静かに刺さる本です。
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ハイライト密度
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