
交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史
デイヴィッド・ライク and 日向 やよい
NHK出版 / 2018-07-27
この本について
自分のルーツとか、生まれつきの要素って、どこまで今の自分に関係あるんだろう…と考え込むことがたまにあります。努力で越えられるのか、それともどうにもならない何かがあるのか。そんな行ったり来たりの気持ちに、この本は別の視点を静かに差し込んでくれました。 古代DNAの研究って難しそうですが、読んでみると「人間ってそもそも混ざりあってできている」という、ごくシンプルな事実が浮かび上がります。ゲノムは一人の祖先から継いだ一本道ではなく、何万年もの交雑が積み重なったモザイクらしい。つまり、自分が「どんな人の血を継いでいるか」を単純化して語れるような存在ではないわけです。また、能力や特性を遺伝で説明しきれないことも強調されていて、努力や環境が思った以上に大きい。このあたりが、自己評価で行き詰まった時の余計な思い込みをほどいてくれます。 さらに面白いのは、歴史の中心が特定の地域にあったという思い込みも揺らすところです。デニソワ人の発見で東ユーラシアの存在感が一気に変わった話など、教科書の裏側でこんな再編が進んでいるのかと驚きました。人類史がこんなにも流動的で、混ざりながら変わってきたと知ると、現代の「分類」に振り回される意味も少し薄れてきます。 系統・ルーツ・能力のことを考えると、つい自分を小さな枠に押し込んでしまいがちな人に刺さる本だと思います。科学的なのに、変に決めつけず、むしろ心のはしっこに余白をつくってくれる一冊でした。
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