
さよならの言い方なんて知らない。3(新潮文庫nex)
河野裕
新潮社 / 2020-01-01
この本について
最近、人に言われた役割や、その場で求められる態度に合わせて動いているうちに、「これって自分の意思なのかな」とふと立ち止まる瞬間が増えてきました。頑張っているつもりなのに、いつの間にか呼吸するみたいに無意識でやっていたことまで重たく感じる。そんな感覚を持っている人には、この三巻の抜粋が引っかかったんじゃないかと思います。 とくに「苦手なことを強要されているなら、真剣にならざるを得ない」という一文。無自覚にやっていたことが急に負荷になるとき、人はむしろ過剰に意識してしまう。その感じを、この作品は呼吸という比喩で丁寧に掬っています。架見崎の世界で語られる“アポリア”や“生命の価値への疑問”は、派手な設定のようでいて、実は日常で立ち止まるあのモヤモヤをそのまま物語に変換したような手触りがあります。 読み進めていると、主人公たちが「生きるとは何か」「選ぶとは何か」に真正面から向き合わされていく様子が、どこか自分の生活にも重なってくるんですよね。夢のような薬の話も、一度甘い場所に逃げ込めたら戻れなくなる怖さを描いていて、無理に前向きにならなくていいけれど、今の自分の足音くらいは確かめておこう、そんな気持ちを静かに呼び起こしてくれます。 自分のペースで考えたいけれど、どこかで答えを急かされている気がする人に刺さると思います。読後に「じゃあ自分はどう生きたいんだろう」と、少しだけ深く呼吸したくなる物語です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの43%が集中しています。
読書の順序
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