
白の闇 (河出文庫)
ジョゼ・サラマーゴ、雨沢泰
河出書房新社 / 2020-03-06
この本について
最近、人の悪意や無関心に触れるたびに、なんとなく気持ちがざらつくことがあります。自分も同じ側にいるんじゃないかと思う瞬間があって、ちょっと嫌になる。でも「どう振る舞えばよかったのか」と考えようとしても、正しさの軸がすぐ揺れる。そんなときに『白の闇』を読むと、物語を追うというより、人間そのものをじっと見つめ直すような時間になります。 登場人物たちは突然の失明によって、尊厳や正しさの基準がごっそり奪われます。そこで露呈するのは、半分の無関心と半分の悪意、そしてそれでも失いきれない、人間としてのぎりぎりの「ましな部分」です。たとえば、見えないことを理由に他人をのぞき見ることへの罪悪感、弱みを見せまいとする本能、死に直面してやっと憎しみがほどけていく感じ。こういう描写が妙に現実的で、自分の中にも同じものがあると認めざるを得なくなります。 同時に、この物語は「弱さにどう向き合うか」という視点もくれます。組織が壊れた世界で、それでも誰かを助ける行動だけは生まれること。必要とされるときに寄り添う犬に抱きつく場面が象徴的で、強さよりも“残っている感情をどう扱うか”のほうが生きていくのに重要なんだと気づかされます。自分の中の名もない何かを、ちょっとだけ信じてみようと思える本です。 人間のきれいごと抜きの部分と、そこでなお残るわずかな希望を見つめたい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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