
正欲(新潮文庫)
朝井リョウ
小学館 / 2021-03
累計読者数109
平均ハイライト数 19.7件/人
star総合評価 72/100
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この本について
日々生きていると、「自分だけ噛み合ってない気がする瞬間」ってありますよね。誰かの言動にモヤっとしても理由が言語化できなかったり、周りの“正しさ”に合わせて動いていたら、いつの間にか自分の声がどこかへ行ってしまったり。正解のないところで立ち止まる時間が、年々増えていく感じがします。 『正欲』は、そのモヤモヤを無理に整理しようとはしません。むしろ、人が抱える孤独やズレを、登場人物の視点を通して丁寧に見せてくる物語です。抜粋にもありますが、「自分が玩具にされていると気づいた瞬間の冷え」「性欲や恋愛という誰もが持つはずのものが、意外と均一じゃないという気づき」「他人の“普通”に巻き込まれていく息苦しさ」――そういう細部に、読んだ人が刺さったんじゃないかと思います。どれも大きな主張ではなく、生活の中の“あれ、これって自分だけ?”という感覚に近いからです。 この本が効くのは、世界の物差しが揺れる中で、何を拠り所にしていいかわからなくなる瞬間です。自分の欲望や価値観を「正しい」「間違っている」で片づけずに、そのまま眺めてみる余白が生まれますし、他者との距離感が変わる場面もあります。正しさの線引きよりも、生きている個々の事情に目を向けたくなるような読後感です。 「誰かと同じになれない理由を、一度ちゃんと見つめてみたい人」に、特に届くと思います。
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