
アパレル興亡
黒木 亮
岩波書店 / 2020-02-18
この本について
仕事でも日常でも、「気づいたら大きな流れに巻き込まれていた」みたいな無力感ってけっこうありませんか。自分の判断が正しかったのか、そもそも何を見ておけば良かったのかさえ分からなくなるあの感じです。アパレル業界の興亡なんて、自分とは遠い話に思えるかもしれませんが、この本を読むと“構造に気づけなかったときの怖さ”がやけに身近に感じられます。 たとえば読者が保存した抜粋には、尾州の工場が毎年一割ずつ減っていく現場の空気や、レナウンが中国企業に買収されるまでの迷走、百貨店のじり貧が静かに全体を侵食していく様子など、表からは見えにくい現場の変化が詰まっています。私が読んで刺さったのは、企業の衰退って「ある日突然」ではなく、小さな判断の積み重ねの末にじわじわ形が決まっていくということでした。そこには大きなスローガンよりも、営業マンの一言や、工場の機械を増設するかどうかの逡巡みたいな、肌感のある意思決定が詰まっています。 だからこそ、この本は仕事で方向性に迷うときに効きます。業績不振の会社がどんな思考の罠に落ちていったのか、逆にどういう現場が粘り強く生き残ったのか。いわゆる成功本とは違って、判断の重たさや不安もそのまま書かれているので、自分の状況に置き換えやすいんです。「自分の仕事はこのままでいいのか」と感じている人ほど、静かに刺さると思います。 特に、“変化が見えたときにはもう手遅れだった”という場面が多く出てくるので、今見えていない盲点に気づくきっかけにもなります。そんな意味で、これはアパレルに興味がある人だけでなく、構造の変化に振り回されがちな人にも向いている一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
読書の順序
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