
わかりやすさの罪
武田 砂鉄
朝日新聞出版 / 2024-01-10
この本について
人と話していて「どっちなの?」「結局どういうこと?」と急かされる場面、けっこうありますよね。自分の中では考えているつもりでも、言葉にした瞬間に雑に二択へ押し込まれるあの感じ。仕事でも私生活でも、説明の“わかりやすさ”を求められるたびに、なんだか大事なものを置き去りにしている気がすることがあります。 『わかりやすさの罪』は、そのモヤモヤを言語化してくれる一冊でした。読みながら「そう、そこなんだよ」と何度も頷いてしまったのは、結論が先に決まっている議論や、選択肢が最初から狭められている状況に対して、こちらがうっすら感じていた違和感を、丁寧に拾い上げてくれるところです。どっちでもないのに「どっち?」と迫られた時に、逃げるでも戦うでもなく、そもそも問いの形自体を見直していいんだと示してくれる視点は、日々の思考の呼吸を少し楽にしてくれます。 もうひとつ刺さったのは、「わからない」を残すことの価値です。理解できなかった作品に対して、なぜわからなかったのかを自分の言葉で語ること。それが本来の“感想”であって、他人が提示した理解に自分を合わせにいく必要はないという指摘は、読書家としても救われました。説明が不足しているドラマの場面を「説明不足」と片づけず、その余白を抱えたままにしておく姿勢も、忙しさの中で忘れがちな視点でした。 すぐ結論にたどり着けない自分を責めがちな人、議論のスピードに置いていかれがちな人、あるいは「要するに何が言いたいの?」という圧に疲れている人に、静かに効いてくる本だと思います。わかろうとする前に立ち止まる余白を、久しぶりに思い出させてくれました。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの35%が集中しています。
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