
悪い夏 (角川文庫)
染井 為人
KADOKAWA / 2020-09-24
この本について
最近、社会の仕組みや人の弱さに触れるたびに、どこに自分の苛立ちや不安の正体があるのか分からなくなることがあります。制度の不公平さにうっすら怒りを覚えたり、気づけば誰かを憐れんでいたり、そんな自分にまた嫌気がさしたり。頭では割り切れない、でも確かに心の底で動いている感情に向き合うのは、けっこうしんどいものです。 『悪い夏』を読んだとき、まさにその「説明しづらいモヤモヤ」を静かに突いてくる感覚がありました。抜粋にもあるように、生活保護と年金の話に感じる不公平感や、誰かに対して嫌悪と憐憫が同時に湧き上がる瞬間、時間を巻き戻したくなる後悔や、自分でも扱いきれない感情のうねり。作品はそれらを大げさに描かず、登場人物たちの日常の中に沈殿したままの“重さ”として置いていきます。その現実味が、逆に自分の内側の感情を照らしてくれるようでした。 読んでいると、理屈よりもまず「こういう気持ち、確かにあるよな」と思わされます。登場人物たちが選択肢を前に立ち止まり、諦めたり、迷ったり、誰かにすがったりする姿は、劇的ではないけれど妙に身に覚えがある。自分の弱さを見つめ直すというより、弱さの“居場所”をやっと理解できるような読後感でした。 社会のグレーな部分や、人の心のざらつきを真正面から描いた物語が読みたい人に刺さると思います。自分の中で言葉にできないモヤモヤを抱えているとき、この本は意外と静かな灯りになってくれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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