
護られなかった者たちへ
中山 七里
宝島社 / 2021-08
この本について
日々まじめに暮らしているだけなのに、「どこかで一歩踏み外すかもしれない」という不安がふっと顔を出すことがありますよね。あるいは、誰かの厚意をどう受け取ればいいのか迷ったり、世の中の不公正に割り切れなさを抱えたまま仕事に向かっていたり。自分もそういう曖昧なモヤモヤを抱えたまま、この本を読みました。 『護られなかった者たちへ』は、犯罪や更生という重いテーマを扱いながらも、「普通に生きている私たち」と地続きの問題を丁寧に描いています。前科者とそうでない人の違いは垣根の高さだけだ、という一節にあるように、人が誤りを犯す可能性を変に特別扱いしない視点がまず刺さりました。そして、厚意や思いやりは“一対一の交換”ではなく、受け取ったものを次の誰かへ渡していく形で広がるものだという言葉は、自分の中の窮屈な道徳観をほぐしてくれました。さらに、制度の不備や社会の偏見を真正面から扱う描写によって、「個人の努力ではどうにもならない現実」を見ないふりしなくていいのだと少し救われました。 人を裁くことに疲れているとき、あるいは自分の正しさに自信がなくなっているとき、この物語は視界をゆっくり広げてくれます。こんな人に刺さると思います。正義や善意をまっすぐ信じられなくなっているけれど、それでも人と関わることを諦めたくない人。 読み終わる頃には、「誰が護られて、誰が護られなかったのか」という問いが他人事ではなくなります。自分の立ち位置をそっと確かめ直したいときに、静かに寄り添ってくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
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