
デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)
河野啓
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この本について
日常の中で、自分が何を目指しているのかよくわからなくなることがあります。頑張っているつもりなのに結果がついてこなかったり、周りからの期待と本音がズレていったり。気づけば「このまま続けていいのかな」と、うっすらした不安だけが残る。そんなときにこの本を読むと、成功物語よりもずっと現実に近い、人が抱える弱さや迷いのほうが胸に刺さります。 『デス・ゾーン』の魅力は、栗城史多という人物を英雄にもしないし、切り捨てもせず、関わった人たちの証言を積み重ねていくことで「自分の物語が自分の手に負えなくなる瞬間」を浮かび上がらせているところです。たとえば、生中継ができないならエベレストに行かないと語る場面には、夢を語り続けるうちに夢が独り歩きしていく怖さがにじみますし、占いで登頂のタイミングを決めようとする姿には、判断を他者に預けてしまいたくなるほど追い詰められた心の揺れが見えます。周囲の人が止められなかったという証言にも、誰かの期待を背負い続けることの重さがそのまま出ています。 読んでいて感じたのは、これは登山の本というより、「自分をどう扱うか」をめぐる物語だということです。無理を重ねているときの言動がどう歪むのか、善意がどこから軌道を外れていくのか。仕事でも人生でも、似たような場面に心当たりがある人には静かに効いてくると思います。こんな人に刺さる本です。自分を追い込みやすい性格だと自覚がある人。
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出版社による紹介
2020年第18回開高健ノンフィクション賞受賞作。 2021年 Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞、ノミネート。 両手の指9本を失いながら“七大陸最高峰単独無酸素”登頂を目指した登山家・栗城史多(くりきのぶかず)氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ、SNS時代の寵児と称賛を受けた。しかし、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。 彼はなぜ凍傷で指を失ったあともエベレストに挑み続けたのか? 最後の挑戦に、登れるはずのない最難関のルートを選んだ理由は何だったのか? 滑落死は本当に事故だったのか? そして、彼は何者だったのか。 謎多き人気クライマーの心の内を、綿密な取材で解き明かす。 ≪選考委員、大絶賛≫ 私たちの社会が抱える深い闇に迫ろうとする著者の試みは、高く評価されるべきだ。 ――姜尚中氏(政治学者) 栗城氏の姿は、社会的承認によってしか生を実感できない現代社会の人間の象徴に見える。 ――田中優子氏(法政大学総長) 人一人の抱える心の闇や孤独。ノンフィクションであるとともに、文学でもある。 ――藤沢周氏(作家) 「デス・ゾーン」の所在を探り当てた著者。その仄暗い場所への旅は、読者をぐいぐいと引きつける。 ――茂木健一郎氏(脳科学者) ならば、栗城をトリックスターとして造形した主犯は誰か。河野自身だ。 ――森達也氏(映画監督・作家) (選評より・五十音順) 【著者略歴】 河野啓(こうのさとし) 1963年愛媛県生まれ。北海道大学法学部卒業。1987年北海道放送入社。ディレクターとして、ドキュメンタリー、ドラマ、情報番組などを制作。高校中退者や不登校の生徒を受け入れる北星学園余市高校を取材したシリーズ番組(『学校とは何か?』〈放送文化基金賞本賞〉、『ツッパリ教師の卒業式』〈日本民間放送連盟賞〉など)を担当。著書に『よみがえる高校』(集英社)、『北緯43度の雪もうひとつの中国とオリンピック』(小学館。第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞)。
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