
わたしの好きな季語
川上弘美
NHK出版 / 2020-11-20
この本について
季節の変わり目って、仕事のことも人間関係も、なんとなく心がざわつきませんか。理由がわかるような、わからないようなまま日々を過ごしてしまう。そんな時に、ふとした景色や匂いに気持ちをすくわれる瞬間があるけれど、それをちゃんと言葉にできない自分にもどかしさを感じたりします。 川上弘美さんの『わたしの好きな季語』は、その“言葉にできない感覚”に、ゆっくり名前をつけてくれる本でした。たとえば、服が「痛たた」と叫ぶように見えてしまう視点や、つつじの整いすぎた姿に「すみません」と思ってしまう感覚。誰も来ない桜の下のテーブルのような、説明不能なのに忘れられない光景。こういう感覚って、理屈じゃなくて、でも確かに心のどこかに居座っているものですよね。季語や俳句を入り口にしながら、自分の中の“微妙な揺れ”に灯りを当ててくれる感じがあるんです。 読んでいると、季節の移ろいがただの風景ではなく、自分の記憶や気持ちとつながっていることに気付かされます。てんとう虫を腕にはわせて空へ飛ばす時の潔さや、春の風邪の妙な艶っぽさ、庭の得体の知れない植物に名前を見つけてもらう安心感。こういう具体的な場面が積み重なることで、自分の中にも同じような感覚が静かに生きていたんだと思わされるのです。 季節に振り回されがちな人、感情のゆらぎをうまく扱えないまま大人になってしまった人には、とくにしみる一冊です。自分の中の“言葉にならないもの”に、少しだけ呼吸を与えてくれる本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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