
国宝 上 青春篇 (朝日文庫)
吉田 修一
株式会社朝日新聞出版 / 2021-09-07
この本について
仕事でも人間関係でも、自分の「出自」や積み重ねてきたものがどれだけ役に立っているのか分からなくなって、ふと足が止まるときがあります。頑張ってきたはずなのに、目の前の誰かと比べてしまって、血が薄まったような心もとなさを感じるあの感覚です。 『国宝 上 青春篇』を読んで刺さったのは、そういう不安を真正面から描きながらも、派手に励ますわけではなく、「人はこんなふうに悩みながら形になっていくんだ」と静かに示してくれるところでした。たとえば、どの辺まで腕を上げると震えてくるかを骨に覚え込ませる稽古の描写や、役者の家に生まれたからこそ逃げられない血の感覚、そして仲間と再会したときに感じる少しの冷たさ。どれも華やかな世界の話なのに、自分たちの日常と地続きで、ちょっと胸が痛くなるんですよね。 この本が効くのは、自分の努力が本当に身になっているのか分からなくなったときです。役者たちは完成品として舞台に立たされる一方で、裏では迷い続けています。そのギャップを覗き見ることで、「迷ってても前に進める」という現実的な安心感が生まれます。それと同時に、家族や仲間との距離感の揺らぎも丁寧に描かれていて、自分の人間関係を見つめ直すきっかけにもなります。 刺さるのは、「自分の成長が目に見えなくて不安な人」。物語としての面白さはもちろん、読みながら自分の立ち位置を静かに確かめられる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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