
討ち入りたくない内蔵助 (文芸社文庫)
白蔵 盈太
文芸社 / 2021-12-23
この本について
仕事でも人間関係でも、「正しさ」と「現実」のあいだで揺れる瞬間ってありますよね。理屈ではこうあるべきだと分かっていても、実際に人と向き合うと割り切れなくて、白黒つけることに自分の心がついてこない。疑い始めると止まらなくなったり、正義を語りながらどこかで自尊心が絡んでいたり、そんな自分に気づくのがしんどかったり。僕もよくあります。 『討ち入りたくない内蔵助』は、あの“忠臣蔵”を題材にしながら、わかりやすい美談とはまるで違う、グレーのまま生きる人間たちのリアルを描いています。印象的なのは「疑って疲れるくらいなら、信じて騙されるほうが楽だ」と割り切る人物が出てきたり、「自分の怒りが暴発した途端に冷める」ような矛盾を抱えた人がいたり、そして内蔵助自身が、逃げたいと泣き言を言いながらも結局踏みとどまる自分をどこかで選んでいること。どれも、僕らが日々心のどこかで向き合っている弱さそのものなんですよね。 この本のすごいところは、登場人物たちの“迷い方”がとにかく具体的で、そのまま自分の姿を見せられているような気になるところです。白黒で語れない場面で人はどう振る舞うのか、責任から逃げたい気持ちと踏みとどまる自分のあいだでどう折り合いをつけるのか、あるいは「美しい正義」を選ばず灰色を抱えたまま生かすという判断にどれだけの重さがあるのか。英雄物語としてではなく、仕事にも生活にもそのまま持ち帰れる“視点の変化”が自然と残ります。 きれいごとに疲れた人、グレーの中で踏ん張る理由を探している人には、とくに刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
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