
この本について
日々いろんなことが起きているのに、気がつくと「あれ、何に笑ってたんだっけ」「なんであの作品にあんなにハマったんだっけ」と記憶がどんどん薄れていく感覚があります。忙しさのせいにしたいけれど、ほんとは自分の中の熱や視点の変化まで流れていってしまっているだけなのかもしれません。 三浦しをんさんの『夢のような幸福』を読むと、その埋もれていた温度がふっと戻ってくる瞬間があります。自分でも忘れていた些細な日常が、しをんさんの文章だと驚くほど生々しく蘇る。作品への“ちょっと邪な”読み方や、キャスティングを本気で考え込んでしまう熱量に触れていると、「ああ、私にもこういう時期あったな」と自然に思い出されるんです。それは大げさな自己変革ではなく、「忘れていた自分の感覚」をそっと拾い直すような体験に近い気がします。 さらに、恋愛スイッチが不発でも漫画にはぐいっと心を掴まれたり、BL作品の違和感に真正面から怒ったりと、感情の振れ幅をそのまま書いてくれているのも読みどころです。物事を線で追いたくなるときと、点でしかつかめないときの揺らぎに寄り添ってくれる感じがあって、「迷いながら推したり悩んだりしてる自分もまあ悪くないか」と思わせてくれます。 作品への好きの熱量や、忘れかけた日常の手ざわりを思い出したい人に刺さる一冊だと思います。
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