
今を生きる思想 西田幾多郎 分断された世界を乗り越える (講談社現代新書100)
櫻井歓
講談社 / 2023-04-13
この本について
最近、SNSで人とのつながりは増えているはずなのに、心のほうはむしろ離れていく感じがある…そんな感覚を抱えている人、多いと思います。情報は溢れているのに、何が「事実」なのかすら分からなくなってくる。自分の居場所や役割も、はっきりしないまま日々が流れていく。僕自身、こういうモヤモヤを抱えたまま働いてきました。 この本が面白いのは、「自己と世界の関係」をまっすぐ見つめ直すところから、そうした混乱に少し風通しを与えてくれる点です。西田幾多郎は、自己を“内側に閉じた存在”としてではなく、行為を通して世界を形づくる“開かれた存在”として捉えます。主観と客観を分ける前の、まだ判断が入り込む前の「そのままの経験」という視点に立ってみると、自分と世界の距離の取り方が少し柔らかくなる。SNSのノイズに疲れたとき、いったんそこに戻る感覚はけっこう効きます。 また、近代以降の私たちが「自由になった代わりに、自分は何者なのかを自分で決めなければならなくなった」という指摘も、今の孤独感と地続きです。個が切り離されやすい時代に、どう自分を保ちつつ他者と関わるか。その問いに対して、この本は哲学の言葉を使いながらも、生々しい生活感のあるヒントを差し出してくれます。難解なイメージのある西田哲学を、変に神秘化せず、現代の問題として読み直してくれているのもありがたいところです。 自分の立ち位置やつながりに揺らぎを感じている人ほど、静かに刺さる本だと思います。
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