
可燃物 (文春e-book)
米澤 穂信
文藝春秋 / 2023-07-25
この本について
仕事でも日常でも、「なんとなく違和感があるのに言語化できない」とか、「直感はあるのに証拠がなくて動けない」といった場面ってありますよね。頭では慎重でいたいのに、心のどこかでざらつきが残る感じ。僕自身、そのグレーな時間がいちばん疲れるタイプです。 米澤穂信『可燃物』を読んで感じたのは、その“判断に迷う瞬間”を丁寧に拾い上げてくれる物語だということです。抜粋を見ても、葛という刑事が直感を頼りつつも、観察と検証を積み重ねながら一歩ずつ疑いを確かめていく姿が印象的です。直感を鵜呑みにするのでも、逆に切り捨てるのでもなく、そのあいだで粘る。その姿勢が、日常の小さな違和感への向き合い方にも重なる気がしました。また、工事用信号や骨の部位など、細かな事実から少しずつ状況を立て直していく描写が続くので、「情報が揃わなくても前に進める方法」が自然と見えてきます。 もう一つ、この本には“人の表情をどう読み取るか”というテーマも静かに流れています。疲れきった目をした人、無感動を装っている人、髪で傷を隠している人。表面的な言動だけで判断せず、そこに別の物語があることを思い出させてくれる。これは対人関係で迷うときにも、妙に効く視点でした。 「違和感を無視せず、でも決めつけにも走れない」という人に特に響く一冊だと思います。物語として楽しみながら、自分の“観察する姿勢”が少しだけ整うような読後感でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの15%が集中しています。
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