
さかさ星 (角川書店単行本)
貴志 祐介
KADOKAWA / 2024-10-02
この本について
仕事でも日常でも、物事の全体像がつかめなくて「自分は何を見落としているんだろう」と不安になることがあります。断片だけ拾っては余計に迷ってしまう、そんな感覚に心当たりがある人にとって、『さかさ星』はフィクションでありながら、視点の持ち方をそっと揺らしてくれる一冊でした。 この物語の人物たちは、みんな不完全なまま事件に向き合います。賀茂禮子が「神の目なんて持っていない」と言い切り、犬の嗅覚のように断片をつないでいく姿は、まさに僕らが日々やっていることと近いんですよね。過去の遺物や伝承が少しずつ意味を持ち始める場面を追っていると、「見えていないことがある前提で進むしかない」という腹の括り方が自然と染みてきます。また、先祖の因縁や祟りといった大きなテーマも、極端な決めつけではなく、人の感情や勘違いが積み重なった結果として描かれるので、歴史的な背景が急に生活の延長線に引き寄せられるような感覚がありました。 特に、家に眠る品々が語り始めるシーンは、物の持つ時間の深さを思い出させてくれます。骨灰磁器のティーカップや、飴を買う女の幽霊画、そして朱蛭丸の由来。どれも「ただの物語上の小物」ではなく、人の行動や記憶が宿っているものとして扱われるので、自分の身の回りにも同じような意味の層が潜んでいるんじゃないかと思えてくるんです。 なのでこれは、謎解きが好きな人だけじゃなく、「自分の目に映っている世界の裏側に、もう一枚の理由を感じたい人」に刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの37%が集中しています。
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