
畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—
TRkin
この本について
仕事でも日常でも、理不尽に巻き込まれたときほど自分の反応が分からなくなることがあります。強く出るべきか、流すべきか、そもそも怒っていいのかさえ曖昧になるあの感じです。相手のほうが明らかに乱暴なのに、こちらだけが正気を保とうとして疲れ果てる、そんな経験をした人は多いと思います。 『畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—』の抜粋を見ていると、読者が反応しているのは、犬に向けられた理不尽な憎悪や、「弱者の味方だったはずなのに」という後ろめたさを前に、自分の中の矛盾に向き合わされる瞬間です。著者の語り口は極端で荒々しいのに、不思議と人間の弱さやみっともなさが露出していて、読みながら自分の感情の底をのぞきこむことになります。たとえば、赤毛の犬に対して一気にスイッチが入る場面や、「いつか必ず嚙まれるという自信」のくだりは、怖れと確信が同居する妙なリアリティを持っています。 この本が効くのは、怒りを否定するのでも肯定するのでもなく、むしろ「人はこんなふうに矛盾したまま生きてしまうものだ」と淡々と示してくれるところです。弱さを隠そうとして空回りしたり、誰かを守りたい気持ちと自分の醜さが入り混じったり、そういう瞬間に妙な救いを感じます。読み終えると、完璧に振る舞おうとする力みが少し抜けて、自分の中にある暴れ馬みたいな感情を、それはそれとして扱えるようになるかもしれません。 自分の中の「扱いづらい感情」とうまく距離を取りたい人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
読書の順序
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