
いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)
三秋 縋
KADOKAWA / 2014-11-22
この本について
最近、「怒るべき場面で黙ってしまう」「何かあっても自分の感情が動かないふりをしてしまう」みたいな癖に気づくことが増えました。表面上は大人しくやり過ごせても、後になって体力を削られていたり、胸のあたりに重さだけが残ったりして、あれって結局なんだったんだろうと考え込んでしまいます。 『いたいのいたいの、とんでゆけ』を読んで印象的だったのは、怒りや痛みを避け続けた主人公が、理不尽な過去を背負う少女との関わりを通じて、自分の“感じたくなかった部分”を否応なく突きつけられていくところです。怒りを我慢すれば物事が丸く収まるわけじゃないこと、飲み込んだ感情はどこかで必ず自分に返ってくることが、二人の会話や沈黙の温度の中でじわじわ分かってきます。また、「家」という場所の居心地の悪さに触れる場面が多くて、環境に順応しすぎることで逆に自分を擦り減らしていた経験を持つ人には、妙に身に覚えがあるはずです。 この物語が教えてくれるのは、派手な救いではなく、「感じないふりを続けると、自分の芯ごと弱っていく」という当たり前だけど直視しにくい事実です。その一方で、缶のミルクティーを飲みながら夜空を見上げる少女の姿のように、ほんの一瞬だけ息がつける光も差し込みます。だからこそ、痛みを抱えた他人と向き合うことが、自分の感情の輪郭を取り戻すきっかけになるのだと静かに気づかされます。 「怒りを押し殺すのが癖になっている人」に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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