
ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)
夢野 久作
講談社 / 2024-01-15
累計読者数4
平均ハイライト数 14.3件/人
推定読了時間 約3時間26分
star総合評価 58/100
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この本について
日常の中で、自分の考えや記憶に急に自信がなくなる瞬間ってありませんか。何かを判断しようとしても、どこまでが自分の意思で、どこからが思い込みなのかよく分からなくなるあの感覚です。忙しくしていると流してしまいがちですが、あの揺らぎってけっこう根深いところに触れている気がします。 『ドグラ・マグラ(上)』を読むと、その揺らぎが一気に表面化します。作中で主人公が味わう「自分が何者かわからない」という混乱は、誇張ではなく、むしろ私たちの日常の延長にあるように感じました。隣室の少女の叫び声が細くなっていく描写や、「返事をしてはいけなかった」と呟く場面は、状況そのものよりも、“判断の根拠が崩れる瞬間”を突きつけてきます。読みながら、自分の思考の土台をそっと揺らされるような、不思議な居心地の悪さが残ります。 面白いのは、この物語が単に恐怖を煽るのではなく、読み手自身の視点を少しずらしてくれる点です。自分の記憶や価値観を「当たり前」として扱っていたところに、別の可能性を差し挟まれると、物事の見え方そのものが変わってきます。これは仕事の判断にも人間関係にも意外と効いて、固まった解釈を一度外す練習になる感じがしました。 自分の思考の足場を疑ってみたい人に刺さる一冊です。
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出版社による紹介
巻頭に置かれるのは、夢野久作が読書界から顧みられることのほとんどなかった1962年に鶴見俊輔が雑誌「思想の科学」に発表した「ドグラ・マグラの世界」である。この評論により、日本の戦後期には忘れられた存在となっていた夢野久作は「再発見」される。 「ドグラ・マグラの世界」の発表がきっかけとなり、鶴見と夢野久作の長男である杉山龍丸の交流が生ずる。やがて杉山龍丸の著書や杉山が編纂した夢野久作の日記などを資料としてじゅうぶんに咀嚼したうえで、鶴見は夢野久作論『夢野久作 迷宮の住人』が書き下ろされる 夢野久作について少年期の鶴見俊輔が出会った夢野久作の『犬神博士』の紹介から、『夢野久作 迷宮の住人』の第一部は始まる。そして『氷の涯』という日本軍のシベリア出兵をモチーフにした作品、さらに異色の長篇推理小説『ドグラ・マグラ』へ。そして、これらの作品が昭和初期の読者にどのように受けとめられたのかと問いが生まれる。 第二部では作家夢野久作の本名である杉山泰道の側からその生涯が辿られる。泰道の伝記的事実の多くは、さらにその長男杉山龍丸の著書によるが、伝記的事実と時代背景を結びつけて読み解くことで、より作品世界に深くわけ入ることができる。 第三部では、夢野作品受容の変遷が綴られる。江戸川乱歩ほか同時代の探偵作家たちにはやはり異形のものとして解されている。しかし年少の読者だった福永武彦や中井英夫たちには強烈な印象が残っていた。敗戦後、占領期に夢野久作が思いおこされることはなかったが、1960年を境にふたたび関心が寄せられるようになり、作品研究・分析が進む。そこで見えてきたものは、中央から遠い地方で、土地の日常言語を駆使して人間の根本問題に迫る、きわめて独創的な作家の姿であった。 本書により、夢野久作というきわめて独自性に満ちた作家に多角的に光が当てられ、読者にとってもそのイメージが鮮明となることが期待される。
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