
経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語 (朝日新書)
東谷 暁
この本について
仕事で判断がぶれたり、どの意見を信用すべきか分からなくなる時があります。正論っぽい言葉が世の中にあふれているのに、実際には人の感情や政治の力学で物事が動いてしまう。そのギャップにモヤっとしている人は多いはずです。 『経済学者の栄光と敗北』は、そのモヤモヤを少し落ち着かせてくれる本でした。読んでみて分かるのは、歴史に名を残した経済学者たちも、立派な理論をつくった「天才」ではなく、息の詰まるような時代の空気の中で迷い続けた人たちだったということです。政治交渉に失望して職を辞したケインズや、功利主義が抱える限界に自ら悩み込んだミルの姿は、いまの私たちの迷いとそこまで遠くありません。理論が万能ではないからこそ、なぜ社会は揺れるのか、なぜ政策はうまくいかないのかを、身体感覚に近い形で理解できます。 もうひとつ刺さったのは、彼らが正義や幸福を「測れる」と信じたところから始まり、やがてその前提そのものが揺らいでいく過程です。快楽と苦痛は本当に計量できるのか。景気を刺激すれば本当に消費は加速するのか。こうした問い直しが、私たちの日常の判断にも静かに効いてきます。正しさよりも、まず「どんな前提で考えているのか」を見直す癖がつく感じです。 経済学が難しいと感じている人より、「人がなぜこんな行動をするのか」を考えるのが好きな人に刺さると思います。理論の説明書というより、一人ひとりの試行錯誤をたどりながら、自分の思考も整えていける一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの53%が集中しています。
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