
ミクロ経済学の力
神取 道宏
日本評論社 / 2014-09
この本について
仕事で何か判断するとき、「なんとなく常識的にこうだろう」で動いてしまって、あとから自分でも理由が説明できなくなることがよくあります。議論していても、同じ話をしているはずなのに、価値判断と事実判断がごちゃまぜで噛み合わないまま終わることも多いですよね。こういうモヤモヤをどう扱えばいいのか、ずっと手がかりを探していました。 『ミクロ経済学の力』を読んでスッと腑に落ちたのは、経済学的な考え方は「世界を単純化するための装置」だという点です。数理モデルで人間の行動を完全に再現するわけではないけれど、余計なノイズをいったん落とすことで、本当に効いている要因だけを見分けやすくなる。常識的議論がたくさんあっても、その9割がどこか変だと感じる理由が、この枠組みだと丁寧に説明されます。また、自由化が良いか悪いかの議論のように、事実と価値判断を区別する視点も、日常の会話や仕事の打ち合わせでそのまま使える感覚でした。 読んでいて個人的に助かったのは、「結果を日常の言葉に訳し直す」姿勢が繰り返し示されているところです。無差別曲線や効用の話も、抽象概念を理解するためというより、消費者がなぜその選択をするのかを現実に結びつけるための道具として扱われています。こういう“現実との接続”があるから、自分の判断基準を落ち着いて組み立て直せる感じがありました。 感覚や空気で議論が流れがちな場で、少しでも確度の高い考え方を持ちたい人に刺さる本だと思います。
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