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荻窪風土記(新潮文庫)

荻窪風土記(新潮文庫)

井伏 鱒二

新潮社 / 1987-04-28

累計読者数3
平均ハイライト数 1.3件/人
推定読了時間 約3時間1分
star総合評価 34/100
boltライト読書型
check_circle推定完走率 42%

この本について

仕事でも生活でも、同じ場所に長くいるほど「自分はこの土地や人たちのことを、本当に知れているんだろうか…」みたいな妙な居心地の悪さってありませんか。毎日見ているのに、歴史や背景となると一気に手が止まる感じです。自分もそうで、知ったふりのまま過ごしてしまうことがよくあります。 『荻窪風土記』を読むと、その“知らなかった層”が少しずつ剝がれていく感覚があるんですよね。たとえば、読者の方が保存していた「ゾッキ本」のくだり。言葉の語源をめぐるやり取りに、当時の空気や人間関係までにじむように浮かんでくる。意味だけじゃなくて、そこにいた人たちの温度が分かる。あるいは、石山大白画伯を訪ねる場面。教会の横の細道、家の配置、画伯の描く絵の気配まで、地図の隅が急に立体的になるように感じます。高山彦九郎の名がひょいと出てくるのも、土地と歴史がふと接続する瞬間としておもしろいところです。 こういう細部に触れていると、「知らないまま過ごす」という曖昧な不安が少し落ち着きます。大きな理屈ではなく、土地の記憶や人の存在が“じわっと輪郭を持つ”ことで、今いる場所との距離感が変わるからだと思います。大げさではなく、日常の見え方が半歩だけ柔らかくなる感じです。 身近な場所の背景を、無理なく拾いなおしたい人に刺さる一冊です。

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書籍情報(出版社紹介・目次)expand_more

出版社による紹介

関東大震災前には、品川の岸壁を離れる汽船の汽笛がはっきり聞えたと言われ、近年までクヌギ林や麦畑が残っていた、武蔵野は荻窪の地に移り住んで五十有余年。満州事変、二・二六事件、太平洋戦争……時世の大きなうねりの中に、荻窪の風土と市井の変遷を捉え、親交を結んだ土地っ子や隣人、文学青年窶(やつ)れした知友たちの人生を軽妙な筆で描き出す。名匠が半生の思いをこめた自伝的長編。
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