
世界はなぜ「ある」のか?
ジム・ホルト and 寺町 朋子
早川書房 / 2013-10-25
この本について
ときどき、自分という存在がどこまで本物なのか分からなくなる瞬間があります。仕事の選択も、人間関係での迷いも、突き詰めると「そもそも世界って何なんだろう」というところに行き着いてしまう。考えても仕方ないと思って蓋をしてきたけど、心の奥ではずっと気になっている。そんなモヤモヤにこの本はじわっと効きます。 刺さった抜粋を見ていると、「私と世界の境界はどこにあるのか」「善悪や美しさって本当に客観的なのか」「物理法則ってそもそも実在なのか」という、ふだん言語化しづらい問いに手を伸ばしている人が多い気がします。この本は、それを“答えを示す”というより、“どう考えられてきたかの地図”として示してくれるところが助かるんですよね。ウィトゲンシュタインやラッセルの迷いに触れると、自分だけが堂々巡りしているわけじゃないと分かるし、ファインマンの「真実は思ったより単純」という感覚に触れると、世界への距離の取り方が少しだけ軽くなります。 何よりよかったのは、「私」という感覚すら揺らぐ場面を通して、日常の些細な悩みが別の角度から見え始めることです。原因を突き止めようと焦るより、“いま見えている世界の前提を一度外してみる”だけで、行動の選択肢が静かに増える。その感覚を味わいたい人に向いている本です。 世界の存在理由に答えを求めてしまうタイプの人ほど、肩の力を抜いて読める一冊だと思います。
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