
ファウスト
ゲーテ ヨハン・ヴォルフガング・フォン、森 鴎外
中央公論新社 / 2004-05
この本について
最近、頑張っているのに自分の中身がまったく変わっていない気がしたり、他人の失敗には厳しいくせに自分の弱さだけは直視できなかったり、結局のところ「進んでいる実感」がつかめないまま日々だけが過ぎることってあります。そういう時にゲーテの『ファウスト』を読むと、物語として楽しむ以上に、自分の内側で起きていることをそのまま言語化されたような不思議な手触りがあります。 読者の保存した一節を眺めていると、多くの人が刺さっているのは、努力しても身の丈が増えない虚しさとか、他人を裁いて自分を保とうとする心理とか、思い通りにならない世界への苛立ちといった、生々しい揺れの部分なんですよね。ファウスト自身がまさにその渦中にいて、格好つけずに迷い散らかしているから、「ああ、これも人間なんだ」と少し距離ができる。そこがまず効いてきます。さらに、善を望むならまず自分が善であれとか、今日できないなら明日もできないという厳しさも、説教ではなく、物語の中の登場人物の吐露として届くので、変に反発が起きない。読む側の中で、目の前の行動にだけそっと帰結する感じがあるんです。 全体として、頭ではなく感情の揺れが前に出てくる物語なので、結論を急がず、自分の迷いをそのまま抱えたまま読みたい人に向いています。特に「変わりたいけど、今の自分のままでは無理かもしれない」とぼんやり思っている人には、ちょうどいい距離で寄り添ってくれる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
読書の順序
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