
鴨川食堂 (小学館文庫)
柏井壽
小学館 / 2015-05-13
この本について
仕事で気を張った日なんかは、家に帰っても気持ちのスイッチが切れなくて、「ちゃんと休めてる気がしないな…」とぼんやりすることがあります。何か特別なことをしたいわけじゃないけれど、心が静かにほどける瞬間だけは欲しい。そんなときに、人によっては音楽だったり散歩だったりするけれど、僕は物語の中の“食べもの”が効くことがあります。 『鴨川食堂』を読んでいると、抜粋にもあったように「美味しい」と思わずこぼれてしまう描写が続きます。派手な展開があるわけじゃないのに、べべ着とか、けったいな、あんじょう、といった京ことばがほんのり混じる会話の空気が、読む側の呼吸までゆっくりにしてくれる。モロコやひろうすみたいな、普段あまり縁のない食べものが出てきても、知らないまま置いていかれる感じがなくて、むしろ“知らない味に思いを馳せる余白”が心地よかったりします。 この本が効く理由は、料理そのものよりも、そこにある小さなやり取りや、人と人の距離感の描き方にあります。「わかりました。お父ちゃんの腕に期待しましょ」という軽いやりとりの奥に、言い切らない優しさがある。値千金みたいな古めの言い回しがぽんと置かれて、時間の流れがすっと緩む。読みながら、その日の自分の喧騒が少しだけ薄まっていく感覚があるんです。 特に、忙しくて余白をなくしがちな人や、「ちゃんと休みたいのに、うまく休めない」と感じやすい人には静かに刺さると思います。大事件は起きないけれど、その代わりに、心がもう一度“日常の速さ”を思い出すような読み心地があります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの19%が集中しています。
読書の順序
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