
ある島の可能性 (河出文庫)
ミシェル・ウエルベック、中村佳子
河出書房新社 / 2016-01-07
この本について
年齢を重ねるほど、人間関係も身体も価値観も、どこかうまく折り合いがつかなくなってくる瞬間が増えます。若い頃に抱えていた不安とはまったく別物の、説明しづらいモヤモヤが急に重くなるような感じです。誰かに言えるほど立派な悩みじゃないのに、自分の中ではけっこう響いてしまうやつです。 『ある島の可能性』の抜粋を眺めていると、そこに刺さっている人の多くは、「老い」「性」「孤独」のズレた温度感に共鳴しているように思います。ウエルベックはその三つをきれいに扱わず、容赦なく、でもどこか人間のどうしようもなさに寄り添うように描くんですよね。たとえば、性への執着が年齢とともに扱いきれなくなっていく感覚や、誰かを尊敬できなくなる瞬間の冷たさ、あるいは感情がだんだん摩耗していく現実。読んでいて楽になる種類の物語ではないけれど、「自分だけが歪んでいるんじゃなかった」と思わせてくれる力があります。 この本が効くのは、きれいごとよりも本音のほうがまだ信用できる、そんな時期にいる人だと思います。救いは多くないけれど、その代わり、現実と折り合いをつけるための視点がいくつか拾えるはずです。例えば、感情が薄れていくことをただの失敗と見なさない考え方や、誰かとの関係が「保つ」よりも「変わっていく」ものだと受け止める余裕みたいなものです。 刺さる人はごく一部だと思います。でも、世の中と自分の距離感に違和感が出てきたとき、そのズレそのものを素材にしてくれる本を探しているなら、これはけっこう心に残ります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの34%が集中しています。
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