
罪と罰(上)(新潮文庫)
ドストエフスキー、工藤 精一郎
新潮社 / 1987-06-09
この本について
仕事にせよ人間関係にせよ、「正しいと思ってやったのに、心のどこかがざわつく」ときがあります。あるいは、貧乏ではないけれど精神的に追い詰められて、ちょっとした判断が極端にぶれてしまうこともある。理屈はわかっているのに、感情の奥に沈んだ泥のようなものが、自分を振り回してくるあの感じです。 『罪と罰』を読んでいると、その泥の正体にゆっくり触れさせられるようなところがあります。どん底に落ちると「箒で掃きだされる」と語られる場面は、社会からの排除というより、自分が自分を見捨てていくプロセスに近い痛みを突いてきます。また、「良心がある者は、あやまちを自覚したら苦悩する」という言葉は、行動の善悪ではなく、後からやってくる内側の揺れこそが本当の罰なんだと気づかせます。さらに、「人がもっとも恐れているのは新しい一歩だ」という一文は、変わりたいのに動けないあの停滞を、驚くほど正直に言語化してくれます。 読んでいて感じるのは、ドストエフスキーが人間の弱さを特別なものとして扱わず、むしろ「ほとんど全員がこうなる」と言い切ってくるところです。だから救われる。ラスコーリニコフの迷走も、犯罪の話として読むより、追い詰められたときに理屈で自分を正当化しようとする心理の極限として読むと、妙に身に覚えがあるんですよね。 自分の中の矛盾や、うしろめたさ、踏み出したいのに踏み出せない気持ちを抱えている人には、とくに刺さると思います。読後に「人間ってこういうところあるよな」と少し冷静に見つめられる本です。
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ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの47%が集中しています。
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