
こちらあみ子 (ちくま文庫)
今村夏子
Australian Geographic / 2014-06
この本について
最近、誰かの言葉に勇気づけられた気がしても、しばらくすると「結局なにも変わってないな」と落ち込むことがあります。励まされたいわけじゃないのに、励まされた“ような気分”だけが残って、むしろモヤモヤが深くなるときがあるんですよね。自分の中に本当に残るものって、どういうものなんだろうと考えさせられます。 『こちらあみ子』を読んでいて刺さったのは、まさにその部分でした。勇気や力は他者が与えられるものじゃなく、「与えよう」とした瞬間に代わり物になってしまう、という断言の冷たさと誠実さ。そして、それでも人は何かを受け取ってしまい、それが後の生き方に静かに影響するという描写。この両方が矛盾なく存在していて、こちらの安易な“物語への期待”を容赦なく外してきます。そこが痛いけど心地よい。自分の中に何が残り、何が残らないのかを考えるきっかけになりました。 さらに、一途さについての視点も強烈でした。一途に愛する者はこの世に居場所がない、という言葉は、一見極端なのに、世間との距離感に悩む人間にとって妙に現実的なんですよね。無理にバランスよく生きようとすると、どこかで歪みが生まれる。その空気が物語全体に流れていて、「みんなと同じように生きられない感覚」を抱えたまま日常を続けている人には深く届くと思います。 刺さるのは、誰かのつくった“正しさ”にうまく馴染めないまま大人になった人。生き方そのものを押しつけない物語を読みたいとき、この一冊は静かに効いてきます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの54%が集中しています。
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