
痴人の愛
谷崎 潤一郎
グーテンベルク21 / 1981-01-01
この本について
人間関係で、自分でも気づかないうちに主導権を明け渡してしまうことってありませんか。最初は向き合っているつもりなのに、気づけば相手の機嫌に合わせてばかりで、どこからこうなったのか思い出せない。読者がこの作品から拾っているのも、まさにその「境界線が溶けていく瞬間」だと思います。 『痴人の愛』は、ただの恋のもつれではなく、人がどんなプロセスで“自分の判断軸”を手放してしまうのかを、生々しいほど丁寧に描いています。ナオミの贅沢やわがままに振り回される場面も、単なる浪費話としてより、主人公が少しずつ自信を削られていく軌跡として読むと、胸に刺さるものがあります。最初は甘やかしているつもりでも、それが習慣になると、自分でも驚くほど立場が逆転してしまう。抜粋に共感が多いのは、この“気づいたら勝てなくなる”感覚が、現実にもよくあるからだと思います。 そしてもう一つ強いのは、「自分が相手を選んでいるはずが、実は自分の虚栄心の方が動いていた」という視点です。主人公がナオミを連れ歩いて褒められたいと思っていたところなど、自分の中にある見栄や承認欲求の影がじわっと照らされるようで、読んでいてどこか苦くなります。 恋愛に限らず、誰かとの距離感が分からなくなる人、自分が何を差し出しすぎているのかに後から気づくタイプの人には刺さります。綺麗事ではなく、「どうしてこんな構図が生まれるのか」を真正面から描いた小説です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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