
CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見 (文春e-book)
ジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スターンバーグ、櫻井祐子・訳、須田桃子・解説
文藝春秋 / 2021-10-06
この本について
研究のニュースを見ても、自分の生活とどうつながるのかよく分からないままモヤっとすることがあります。便利になるのは分かるけど、どこまで踏み込んでいい技術なのか、逆にどこで線を引くべきなのか。そのあたりの判断がずっと曖昧なまま動いている感じがして、置いていかれるような感覚があるんですよね。 この本は、最先端の遺伝子編集技術を「すごい発明です!」と持ち上げるわけではなく、細菌の免疫システムから始まる地道な研究の積み重ねと、そこに向き合う人間の迷いや議論が、そのまま描かれています。読んでいると、技術そのものよりも「どう向き合うか」のほうがずっと難しいということが分かってきます。患者さんの人生や多様性への配慮、治療と生殖細胞の編集を分けて考える人たちのスタンスなど、科学の周りにある現実的な判断のプロセスが具体的に見えるのがありがたいところでした。 また、この本は“人間の遺伝子はバグだらけのプログラムではない”という視点を何度も思い出させてくれます。技術がどれだけ進んでも、何を変えるべきで、何を変えないまま受け止めるべきなのか。その境界を他人任せにせず、自分でも考えてみようと思える読後感があります。 科学ニュースのスピードに置いていかれている気がする人や、倫理の話になると途端に不安になる人には、とても静かに効く本だと思います。
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