
聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)
井上真偽
講談社 / 2016-07-06
この本について
人間関係の裏側が読めないときって、ちょっと疲れませんか。相手の本心を探ろうとしても、結局は自分の思い込みで判断してしまって、かえって混乱する……。僕もよくそういう袋小路に入るのですが、『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』を読んでいると、視点を切り替える余白みたいなものが生まれるんですよね。 この作品の人物たちは、とにかく癖が強い。夾竹桃や南京錠、地下の納戸、家政婦の不自然な振る舞い、青髪の探偵まで、とにかく「情報が過剰」な世界。その中で一つひとつの言動を丹念に拾っていくと、最初に抱いた印象がどれだけ曖昧なものだったかがよく分かります。論理で人を見るというより、「見落としていた可能性」を丁寧に拾い直す感覚に近いです。特に、静かな会話シーンの裏に小さな違和感が潜んでいて、後から「あれが意味を持つのか」と気づくところは、現実の人間関係にもそのまま持ち帰れる感じがしました。 それに、この物語の魅力って、誰も完全な善人にも悪人にも描かれないところなんですよね。派手な装いの親戚や、老けて見える女性、家政婦の不自然な料理下手。それらが「ラベル」を貼らせるけれど、物語が進むとそのラベルがどれほど頼りないかが露わになる。固定観念のほうがよほど暴力的なんじゃないか、とハッとさせられました。 表の顔と裏の顔の間でよく迷う人、相手を深読みしすぎてしまう人には、特に刺さる作品だと思います。情報が氾濫しているのに、決して読者を置いていかず、むしろ「可能性を一つずつ並べて確かめていく」という姿勢を自然と身につけさせてくれる物語でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
読書の順序
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