
タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源
ピーター・ゴドフリー=スミス and 夏目大
みすず書房 / 2018-11
この本について
仕事で判断に迷ったり、自分の行動原理がよく分からなくなる瞬間ってありますよね。私も「なんでこんな動きをしてしまうんだろう」と自分に首をかしげることがよくあって、そのたびに“心とか意識ってそもそも何なんだろう”というところに戻ってしまいます。そんな時期に読んで強く残ったのが、この『タコの心身問題』でした。 この本が面白いのは、意識を「人間の内側の話」として扱わないところです。読者の方が保存した抜粋にもあるように、タコが人間と共通点のほとんどない進化の道のりから、似たように“行動を生む仕組み”や“世界を認識する構造”にたどり着いている。ここを知ると、自分の心の動きをもっと素材として扱えるようになります。たとえば「行動をつくるのが神経系の本質」という視点は、悩むより動く方が頭の構造に合っているのでは、という実感につながりましたし、タコの分散した神経系を知ると、自分が複数の声を抱えるみたいに迷うのも、ある意味ふつうだと思えるようになります。 もう一つ、この本には「自分の感じ方を絶対化しない」という救いがあります。タコの主観を想像しようとすると、どうしても自分の心を前提にしてしまう。その限界を自覚することで、他者への過剰な期待や失望から少し距離を取れるようになりました。仕事でも人間関係でも、これはけっこう効きます。 自分の思考や行動の“根っこ”を別の生物から見直したい人に向いている一冊です。
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