
歌うカタツムリ-進化とらせんの物語 (岩波科学ライブラリー)
千葉 聡
岩波書店 / 2023-07-19
この本について
ときどき、自分の選択や仕事の方向性が「必然」なのか「たまたま」なのか分からなくなることがあります。努力すれば結果が出るはずだと思いたい一方で、偶然の積み重ねに振り回されている気もする。そんなモヤモヤにうまく言葉がつかないまま、日々が進んでいく感じです。 『歌うカタツムリ』を読んでいて面白かったのは、進化をめぐる議論の多くが、まさにその「必然か偶然か」のあいだを揺れていることでした。環境に適応した結果では説明できない多様性や、遺伝的浮動のような“ランダムさ”がどれほど生物の姿を形づくっているのか。巨大な論争や化石の断片、生殖器の形の違いまで、具体的な事例をたどるうちに、私たちが普段「理由がある」と思い込んでいるものの中にも、説明しきれない揺らぎが息づいていることが見えてきます。 とはいえ、この本はランダムさを礼賛するわけでも、適応を否定するわけでもありません。どちらの視点にも強みがあり、どちらか一方では捉えきれない世界がある。分子進化から中立理論、適応放散と非適応的放散の両面まで、議論の往復を丁寧に追っていくと、「一つの答えに決めつけなくてもいい」という余白が残るのが、この本のいいところだと思います。 物事に“意味づけしすぎて疲れてしまう人”には、特に刺さる一冊です。自分の歩みも、必然と偶然のあいだを行き来しながら進んでいるだけなのかもしれない。そんな視点の切り替えを静かにもたらしてくれる本でした。
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