
エッセイの書き方 読んでもらえる文章のコツ (中公文庫)
岸本葉子
中央公論新社 / 2018-08
この本について
文章を書こうとすると、どうしても「とりあえず書き始めてしまう」癖が出てしまう人、多いと思います。僕もそのタイプで、書き終わってから「これ何が言いたかったんだっけ」と迷子になることがよくあります。自分の中では強く響いているのに、読み手には伝わっていない気がする。そんなズレに、じわっと悩んでしまう時期がありました。 岸本葉子さんの『エッセイの書き方』は、そのズレをどう埋めるかを、とても現実的に教えてくれます。特に刺さるのは、書きたいことの中心を「転」に置く、という発想です。抽象的なテーマよりも、具体的なエピソードを先に決める。しかも、そのエピソードが読者にとって「へえーっ」になるかどうかを基準に選ぶ。この順番を変えるだけで、文章の手触りがガラッと変わります。また、「構成は書き始める前に紙に書く」という徹底した姿勢も、勢い任せで書き進めていた自分には大きな気づきでした。起承転結を後追いで整えるのではなく、最初に転から配列することで、迷走しにくくなる実感があります。 さらに、A=自分の書きたさ、B=他者が読みたくなるように、この二つを行き来する感覚も印象的でした。どちらか一方に寄りすぎると途端にバランスを失う。その往復こそがエッセイの作業であり、訓練ポイントなんだと腑に落ちます。読者に寄り添うための「読みやすさ」と、自分しか持っていない題材の具体性。その二本軸で組み立てれば、等身大のままでも文章は十分に届くのだと感じました。 書きたい気持ちはあるのに、どう整理すればいいかわからない人。あるいは、いつも途中で文章がぼやけてしまう人。そんな人に静かに効く一冊だと思います。
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