
人生は苦である、でも死んではいけない (講談社現代新書)
岸見一郎
この本について
最近、「なんとなく生きづらい」「頑張っているはずなのに報われている感じがしない」とぼんやり思うことが増えていませんか。うまくいっている時でさえ不安が残ったり、逆に挫折した時は全部が終わったように感じたり。頭では「そんなはずない」と分かっていても、気持ちがついてこない時ってありますよね。 岸見一郎さんの『人生は苦である、でも死んではいけない』は、そういう時にいきなり元気にしてくれるような本ではありません。むしろ、いま感じている重さをいったんそのまま受け止めつつ、別の角度から光を当ててくれるような感覚に近いです。たとえば、「人生はそもそも苦である」という視点は冷たく聞こえるけれど、苦しさが“異常事態”ではないと思えるだけで、少し呼吸しやすくなるところがあります。また、成功と幸福を切り分ける話も印象的で、「達成できていない自分=不幸」という無意識の前提がゆるんでいきます。何かを成し遂げなくても、瞬間ごとに人生は完結しているという考え方は、失敗続きの日でも救われる瞬間があります。 さらに、他者の存在やつながりについての記述はとても静かで、それでいて刺さります。誰かにとって自分の存在がどれほど大きいかは、生きているうちには気づきにくいものだという指摘は、重いけれど大事な現実ですよね。働けるかどうかで価値が決まるわけではない、という部分も今の社会を生きていると忘れがちですが、読んでいて肩の力が抜けました。 生き方や幸せの感覚を「外側の基準から離して考えたい人」に特にしっくりくる一冊だと思います。今の状況を劇的に変える処方箋というより、ゆっくりと自分の足場を確かめ直すための本として置いておきたいです。
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